マニュアルに関する話 ― 2011/11/24
レゴブロックは関係しない話。w
私のメインの仕事は「テクニカルライター」である。
ハードウェアやソフトウェアに関する複雑な操作や難解な知識を、それを欲しているユーザーに対して、マニュアル、ビデオ、インタラクティブアプリなどを利用して、わかりやすく伝える仕事である。
たまたま、非常勤講師をしている学校の学生(他の先生の研究室の学生)が、卒研としてマニュアルに関する研究をしたいというので、時折助言をしていた。
その学生から「マニュアルの外観デザイン(文字サイズやフォント
、文字色など)というものを、統計的に調べて数値化することは可能でしょうか?また、それは意味があるでしょうか?」という質問を受けたので、後述するメールのように返事をした。
このブログで取り上げる理由は、「誰でも一生のうち何回かは、何らかのマニュアルを書く(あるいは書かざるを得ない)機会はあるでしょう」という単純なもの。w
ここで書いているのは外観デザインに関することだが、いつも「誰のためのマニュアル?」ということを念頭に置いておけば、より伝わりやすい中身(コンテンツ)を作ることができると思う。
以下、そのメールの転載。
───────────────────────────────
○○さま
こんにちは、五十川です。
私は「マニュアルに一般論はない」というスタンスです。
つまり、マニュアル制作の根本にある「誰のためのマニュアル?」と
いうことをきちんと考えれば、製品によって、適した判型、文字サイ
ズ、フォント、文字色、紙色などが決まるはずです。
例えば、高齢者向けのマニュアルなら文字はできるだけ大きくすべき
です。出先で参照する必要のあるマニュアルになら判型を小さくすべ
きです。暗い中で見る可能性のあるマニュアルであれば、文字と地の
コントラストを強くすることを考えます。実物とマニュアルを見比べ
ながら細かい作業をさせる場合は、余白はできるだけ狭い方が使いや
すいでしょう。
そういったことをいろいろと考えることも、マニュアル制作のプロの
大切な仕事です。
ですから「施工用マニュアル」を、どんな人たち(年齢層、性別、知
識レベル‥)が、どんなところ(場所の広さ、屋内外、天候、手袋、
ゴーグル、ヘルメット‥)で読むのかをきちんと把握して、それに合
った、判型、文字サイズ、フォント、文字色、紙色、紙質‥を決定す
べきです。
そこに、「一般的な」マニュアルの統計的な数字を当てはめても、あ
まり意味のあるものにはならないと思います。
例えば、万歩計のマニュアルは一緒にポケット入れることができるよ
うにポケットサイズで作る場合が主流です。ここに、何冊ものA4のマ
ニュアルを調べて導かれた余白や文字サイズを当てはめても、何の意
味もありませんよね。
私自身、「一般的なマニュアルにおいて見やすい数値」というものが
どこかにあったとしても、それを信用することはないでしょう。
もし「施工用マニュアル」に関して、マニュアルでなんらかの数値化
をするのであれば、できるかぎり同じ層のユーザーに向けた多種多様
なマニュアルを集める必要があると思います。もっとも、それらのマ
ニュアルが「ユーザーのことをちゃんと考えたマニュアル」でなけれ
ば、出てくる数字にあまり意味が生まれるとは思いません。
単なる「平均」の数字が出てくるだけです。(^_^)
───────────────────────────────
転載終了。
コメント
_ こてぃ ― 2011年11月24日 10:50
_ BUGGY_COJI ― 2011年11月24日 12:36
一般的というくくりは難しいですよね。
僕も広告・看板の仕事をしていた時に、文字の大きさや配置位置などを先輩に訪ねた事がありますが、ざっくりとした基本的な配置があって、あとは使い手の立場になって考えて作るんだと教わりました。
色々なユーザーの立場になって考える事の出来るセンスを養う事も大事なんでしょうね・・・。
改めて勉強になりました★
僕も広告・看板の仕事をしていた時に、文字の大きさや配置位置などを先輩に訪ねた事がありますが、ざっくりとした基本的な配置があって、あとは使い手の立場になって考えて作るんだと教わりました。
色々なユーザーの立場になって考える事の出来るセンスを養う事も大事なんでしょうね・・・。
改めて勉強になりました★
_ hirayu ― 2011年11月24日 15:53
そうですよねえ。統計をとるというのは、一般論化、マニエリスム、空気読め社会への罠ですよねえ。かんたんだし、そういうのが好きな人いるんですよねえ。
_ 五十川芳仁 ― 2011年11月24日 16:04
●こてぃさん
御意。メーカー内のマニュアル部門なんかだと、部内のライターだれに書かせても同じ文章が出てくることを「標準化の理想」としてたりしますからね。
本来、ライターなんて職業する人は、「オレにはオレの表現がある」「ワタシのマニュアルは誰よりも分かりやすい」といった独りよがりのプライドがないと、継続も進化もできないものだと思うんですがねぇ。w
●BUGGY_COJIさん
「色々なユーザーの立場になって考える」。そう、そこなんですよね。
世の中のほぼすべてのプロダクトは、「誰かのために」あるものなのに、そこの配慮が欠けているものが多々ある。
私自身もまだまだ勉強中です。(^_^;)
御意。メーカー内のマニュアル部門なんかだと、部内のライターだれに書かせても同じ文章が出てくることを「標準化の理想」としてたりしますからね。
本来、ライターなんて職業する人は、「オレにはオレの表現がある」「ワタシのマニュアルは誰よりも分かりやすい」といった独りよがりのプライドがないと、継続も進化もできないものだと思うんですがねぇ。w
●BUGGY_COJIさん
「色々なユーザーの立場になって考える」。そう、そこなんですよね。
世の中のほぼすべてのプロダクトは、「誰かのために」あるものなのに、そこの配慮が欠けているものが多々ある。
私自身もまだまだ勉強中です。(^_^;)
_ hirayu ― 2011年11月24日 16:17
「それは意味があるでしょうか?」と質問を投げかけたあたり、この学生さん、いいセンスしてると思います。
_ 五十川芳仁 ― 2011年11月25日 07:06
●hirayuさん
マニエリスム‥‥ってなんだ?って調べちゃいました。(^_^;)
一般論化を進めがちな人って「自分でできない」「自分でやったことがない」たちが多い気がしています。ま、そういうもんですよね。
マニエリスム‥‥ってなんだ?って調べちゃいました。(^_^;)
一般論化を進めがちな人って「自分でできない」「自分でやったことがない」たちが多い気がしています。ま、そういうもんですよね。
コメントをどうぞ
※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。
※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。
トラックバック
このエントリのトラックバックURL: http://isogawa.asablo.jp/blog/2011/11/24/6212793/tb
読みやすくするために、1文は○○文字以下にしましょう、などという文章論を見かけますけど、読みやすい文章は何文字だろうが読みやすいです。枕草子然り、夏目漱石然り・・・
といっても、何かについて議論するときの拠り所は「数値」なんでしょうかねぇ。
そんな議論にあまり加わりたいとも思いませんけど(笑)。